東洋医学の『気』って何?(後)
前回に引き続き『気』についてお話していきます。
前回は『気』とはどういうものなのか、『気』にはどんな種類があるのかについて話しました。
今回は『気』の働きや、『気』に異常が起きたらどうなるのか見ていきたいと思います。
気の作用
『気』はどんなことをしているのでしょうか?
『気』には5つの作用があり、その作用にそれぞれ名前がついています。
- 推動作用
- 押し動かす作用
- 身体の成長に関与
- 五臓六腑や組織の活動に関与
- 血や津液の運行に関与
- 温煦作用
- 温める作用
- 体温の維持に関与
- 防御作用
- 身体を防御する作用
- 外邪の侵入を防ぐ
- 固摂作用
- 固定し、一定に留める作用
- 血液や体液が漏れ出るのを抑える
- 内蔵を一定の位置に保つ
- 気化作用
- 作る、作り変える作用
- 気、血、津液を作る
- 汗や尿の排出
『気』たくさんのことをやってくれています。
この1つでも作用がうまく働かなくなると、体調を崩してしまいます。
気の異常
では、『気』に異常が起きるとはどういうことなのでしょうか?
言葉でいうと簡単ですが、先程の5つの作用がうまく動かなくなるということです。
『気』の異常のことを『気の病(やまい)』や『気病(きびょう)』と言います。
『気の病』には大きく分けて「気が足りなくなる『気虚』」と「気が詰まって動かなくなる『気滞』」の2つがあります。
●気虚
何らかの原因で必要な量の『気』が足りなくなっている状態です。
原因として多いのは『気』を作るための材料(食事)が足りない、もしくは『気』を作るための消化吸収機能が低下していることです。
その他、慢性的な病気や出産、過労、老化などで作る『気』の量よりも使う『気』の量が多くなっている場合でも起きることがあります。
また『気虚』が続くと、『気』を原料としている『血』や『津液』の不足も引き起こすこともあります。
気虚になるとどんな症状が現れてくるのでしょうか?
- 気虚の症状の例
- 倦怠感、無気力
- 声が小さい、声に力がない、ボソボソと喋る
- 自汗(何もしてないのに汗をダラダラとかいてしまう)
- 経早(月経が早く来る)
- 息切れ
気虚が進行してくると身体の中のものを一定の位置に保つ事ができず、落ちてくることがあります。
その結果、内臓下垂や頻尿、下痢を繰り返すといった症状が見られることもあります。
●気滞
何らかの原因で『気』がうまく流れず、停滞している状態です。
気滞は、直接気滞が起きる場合もあれば、何かが虚した(足りない)ため結果的に気滞を起こしているケースも多く見られます。
直接気滞が起きてしまう場合は、例えば川が流れていて、そこに崖崩れなどで川がせき止められてしまうような場合です。
これは手術など外的な要因が原因のことが多いです。
一方で何かが虚した結果の気滞ですが、例えばある程度の流量があれば小石や土砂を下流に押し流してくれますが、流れる水が少なくて土砂を押し流せないと、そこに土砂が積もって最終的に水をせき止めてしまうというような場合です。
気滞の症状はどのようなものがあるのでしょうか?
- 気滞の症状の例
- 憂うつ感
- ゲップやおならが増える
- 脹痛(張った痛み。例:食べ過ぎやガスでお腹が張って痛む)
- 咳やくしゃみ
- イライラ、癇癪(かんしゃく)
- めまい
- 動悸、息切れ
場合によっては悪心や嘔吐が起きることもあります。
『気』は人が人らしく生きるための一番基本となるものです。
だからといって多ければ良いというものではありません。
多すぎても、少なすぎても身体に不調が起きてしまいます。
このあたりはバランスをかんがえる東洋医学らしい一面ですね。
『気』を作るためには、バランスの取れた適度な食事。
『気』をしっかり巡らせるためには、適度に体を動かすこと。
『気』を安定させるには、しっかりと睡眠を取ることが大切です。
『気』については以上となります。
今後、『血』や『津液』についても書きますので読んでみてください。
【参考文献】
・黄帝内経
・日本鍼灸医学 経絡治療学会編纂
・よくわかる経絡治療講義 大上勝行
・東洋医学のしくみ 新星出版社
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