早くも鍼灸院を構えて一月半経ちました。
もちろん初めて鍼灸を受けるという患者さんもいらっしゃいます。
なので鍼灸にも関わる『東洋医学』についてお話しようと思います。

まず『東洋医学』とは何を指しているのでしょうか？
一般的に日本で『東洋医学』というと、「古代中国」で発展した中国医学を起源とする伝統医学を指します。
この中国医学にはいわゆる漢方薬（中薬）や鍼灸などが含まれます。
もっと広義に捉えるならば、推拿(すいな)や吸い玉等を含めた民間療法をひっくるめて東洋医学と答える方もいるかと思います。
　※推拿：中国発祥の徒手療法。
　※吸い玉の起源：インドとも中国ともギリシャとも言われ定かではない。

その中国医学が朝鮮半島を介して日本に持ち込まれ、当初は漢方医学と呼ばれていました。
その後、明治時代に漢方医学を廃止し、オランダから伝わった蘭方医学を「国の医学」とするという方針としたため、「国の医学」である西洋から伝わった医学と比較するために『東洋医学』という呼ばれ方をするようになったと言われています。
ちなみに「漢方薬」という言葉は、先程の漢方医学で使用される薬という意味で、中国では中薬などと呼ばれます。

では東洋医学と西洋医学を少し比較してみましょう！

• 「病気」の基準
  西洋医学では「ここまでは健康、ここからは病気」という明確な境目があります。

  

  例えば、体調が悪くて検査を受けたけど「数値は問題ないので病気ではない」ということを経験したことがあるかもいるのではないでしょうか？
  東洋医学にはそういった境目はなく、健康と病気の間はグラデーションの様になっています。

  

  すこし違う言い方をすると、小学校の理科で習った天秤（てんびん）が釣り合っている状態が健康で、どちらかに完全に傾いた状態が病と考えます。その間で微妙に揺れたり、少し傾いたりした状態が先程のグラデーションの中にいる状態です。
  このグラデーションの中にいる状態を、東洋医学では『未病（みびょう）』と言います。
  ちなみに、ほとんどの人がこの『未病』の状態で生活をしていて、全く自覚症状のない方もいれば、肩こりなどを含めた「病気とは言えないかもしれないけど、なんとなく調子が良くない」といった感じになっています。

• 治療の目的
  西洋医学では「病気」という状態を科学的な検査等を用いて明確にします。
  そして、その症状や病気の原因である「病巣」や「病因」を、薬や手術で排除することが治療の目的となっています。

  

  東洋医学ができた時期にはまだ科学的な検査方法は存在しませんでした。
  そのため独自の検査方法である四診（望診、聞診、問診、切診）を用いて、身体の中で何が起きていて、どういった状態になっていて、「全体のバランス」はどう崩れているのかを判断します。
  その「バランスが崩れている状態」を「バランスが取れている状態」に戻すことで、自己治癒力を高めることを目的としています。

  

  そのためどんなにバランスを調えても、自己治癒力を上回る勢いで侵攻する病気や過度に自己治癒力を落とす行為を繰り返す場合には期待した効果が現れないこともあります。

• 得意な分野
  西洋医学は、その「原因」を排除するという特徴から、原因のはっきりしている病態に対する治療を得意としています。
  逆を言えば、原因のはっきりしない状態では手の打ちようがないこともあります。
  東洋医学がもっとも得意とするのは『未病』への対処です。
  もちろん原因のはっきりしている病態も結局はバランスが崩れた結果であるので対応できます。
  もともと、明治時代より前はまだ西洋医学はそこまで普及しておらず、国内ではほとんどの病気やケガを鍼灸や漢方薬で対処していたため、対応する方法自体は持ち合わせているのです。
  しかし、状態によっては西洋医学の方が患者さんに掛かる負担が少なくて済む場合もあります。
  
  

さて東洋医学について、また西洋医学との違いをみてきました。
ちなみにすべての鍼灸が東洋医学というわけではありません！
鍼灸にも東洋医学的な方法もあれば、西洋医学的な方法もあり、ほとんどの鍼灸師が両方を組み合わせて施術を行っています（意識的にか、無意識的にかは置いておいて）。
ようは使い方次第で、どちらが良い悪いということはありません。
双方のメリット･デメリットをよく理解し、健康のために利用することが大切です。

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