東洋医学の秋と養生②
引き続き東洋医学の中での秋についてです。
今回は、秋の養生法についてお話しようと思います。
各季節に合わせた養生法はいくつかあり、秋には秋の養生法があります。
養生とはただ休むということではありません。
広辞苑ではこのように書かれていて、健康のためまたは病後の回復のための生活習慣や行動のことを言います。
養生の意味(広辞苑)
●生命を養うこと。健康の増進をはかること。衛生を守ること。摂生せっせい。
●病気・病後の手当をすること。保養。
別の言葉で言うならばセルフケアです!
さてこれから養生法をお伝えするのですが、その前に少しだけ気をつけるべきことをお伝えしようと思います。
●秋の養生で気をつけること
秋は冬に備えて身体の中を変えていく季節であると同時に、夏の間に受けたダメージが目に見えてくる季節です。
そのため秋の過ごし方が、冬の間の体調に大きく影響します。
秋に出てくる身体の不調は、夏に受けたダメージがもとになって出てくる症状が大半なので、症状だけに目を向けて良くしようとしても、回復力がないためうまくいかないケースが多いのが事実です。
そのため、まずは身体自体を養ってあげることが重要です。
身体を立て直すには食事が最も大切です。
ただし胃腸も弱っているため、ただ栄養を取るというよりも、消化の良い温かいものをよく噛んで食べるようにしてください。
●秋の養生法(セルフケア)
養生とは、つまるところ次の季節に向けての準備です。
秋の養生法とは、冬に向けての準備をすること。
できるだけ早めに準備を始めることをお勧めします。
さて、養生法はいくつかあります。
もちろんすべて行うことができれば良いのですが、自分でできそうなものから取り入れてみましょう。
・旬の食べ物で芯から温める
旬の食べ物は、身体が季節にに順応できるように手助けしてくれる力を持っています。
秋が旬の野菜にはゴボウ、レンコン、玉ねぎなどの根菜、シメジ、シイタケなどのキノコ類、ブロッコリー、チンゲン菜などの青菜、里芋、さつま芋、ジャガ芋、長芋などのイモ類など非常に多いです。
特に根菜とイモ類が多く、根菜やイモ類は身体を温めてくれます。
逆に夏の食べ物は身体を冷やすものが多く、暑い時期は体温を下げることは大事なのですが、胃腸が疲れやすくさせてしまいます。
そのため秋の野菜は夏に疲れた胃腸を、やさしく温めて調子を整えてくれます。
秋に冷やす食べ物を食べ続けていると、ただでさえ気温が下がり身体を冷やしてしまう季節なのに、内からも冷やしてしまうため、本当であれば夏の終わりごろからは食べ物に気を付けたほうがいいのです。
同じように旬でない食べ物は、場合によっては身体に良くない影響を与える場合もあるため、できるだけ旬のものを選びましょう。
・果物は要注意
秋は野菜以外にも果物や木の実も多く旬を迎えます。
秋の果物は甘くておいしいですよね!
ですが甘い果物の食べ過ぎは要注意です。
昔は冬に備えて糖分をとる必要があったのかもしれませんが、現代の食生活は栄養過多(正確には偏りが大きい)になっており、むしろ糖分の取りすぎになってしまいます。
「お菓子のような砂糖じゃないし、果物だから大丈夫なんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんね。
砂糖の成分はスクロース(ショ糖)といわれる二糖類で体内で分解されるとフルクトース(果糖)とグルコース(ブドウ糖)に変わります。
一方果物の甘さは主にフルクトースによるものです。
確かにスクロースとフルクトースを同量摂取するのであれば、フルクトースの方がマシです。
マシなのですが、先ほどもお伝えしたように、現代の食生活において糖質は摂りすぎになっています。
そのため果物も嗜好品程度に考えておかないと、糖質の取りすぎになってしまいます。
また果物の多くには身体を冷やす効果があり、身体の冷えやすい秋には気を付けるべきものなのです。
・冷たいものは控える
これまで秋についての話の中や養生の話の中で冷えという言葉を何度も言っていますね。
やはり身体を冷やすことは、それだけで身体に負担をかけてしまいます。
特に近年の夏は、非常に暑くついつい冷たいドリンクやアイス、スムージーなんかを摂りがちです。
身体を冷やすと、特に胃腸系にダメージを負います。
部屋を暖かくしてれば大丈夫と思ってはいけません!
身体の中に取り込むわけですから、芯から冷やしてしまいます。
この夏に受けた冷えのダメージは秋や冬に現れます。
先にも書きましたが、冬には陰気が多くなるので、身体は冷えないように陽気を必要とします。
秋はこの陽気を蓄えておかなければならない季節なのですが、夏に冷やして陽気を使ってしまっていて、ガス欠状態になっているます。
放っておくと冬までにしっかりと蓄えることができず、陽気が不足したまま冬を迎えてしまいます
この陽気不足は、しっかりと陽気を摂り直せば大丈夫です。
温かい消化に良い食べ物をよく噛んで食べることで、ダメージを受けた胃腸の状態を調え陽気を取り込むことができます。
・早めの冬支度
秋は朝晩は肌寒くなってきますが、昼間はまだ暖かいですよね?
そのため、「まだ温かいから」「まだ着こむには早すぎるから」と薄着の方が多いです。
しかし、この昼間と朝晩の寒暖差が身体にとっては負担が大きく、筋肉の引きつって動きが悪くなってしまい、ぎっくり腰や寝違えが増えやすくなってきます。
身体が冷えを感じてからではもう遅いのです。
また、涼しくなってきから多少羽織るものを持って出かける方はいらっしゃいますが、足元はあまり気にしていない方が多いように思います。
身体を温めてくれるのは、温かい血液です。
心臓から出た温かい血液も、脚まで到達すると冷やされて温度が下がってしまいます。
温度の下がった冷たい血液は、心臓まで戻ってくる間に、通り道であるお腹や腰を冷やして戻ってきます。
冷えは足元からやってくることが多く、できるだけ早いうちから足元は暖かくしておくことが望ましいです。
私も、すでにズボンの下に足首までのレギンスを履いています。
ただいくら温かい方がいいとはいえ、あまり早いうちから着込んでいると、汗で血を消耗してしまい、陽気を外に漏らしてしまうため身体を冷やしてしまいます。
多少動いても汗ばまなくなったなという時期を目処にするのが良いでしょう。
・衣服をうまく使う
前回「陽気を体内にしっかりと蓄えるために、陰気で周りを堅めて内側(身体の陰の部分)にしまい込んで冬に備える」とお伝えしましたが、身体は少しずつ冬に向けて冬仕様の身体になっていきます。
しっかりと陰気で陽気を包み込むことができれば、多少の寒さを感じても身体の内側に陽気が多く暖かく保っていられるため、寒さに負けない冬の身体になることができます。
秋は季節の変わり目ということもあり、気候の変化が大きい季節です。
日によって温度が全く違うこともあれば、一日の中でもかなり差があることもよくありますよね。
涼しくなってきたのに夏の薄着を続けていると、蓄えないといけない陽気を使い続けて消耗してします。
また「もう秋だから」と暑い日に無理に厚着をしてしまうと、汗をかいて血を消耗してしまい、結果として陽気を消耗してしまいます。
陽気の蓄えが不十分だと、なかなか冬仕様の身体になることができません。
多少面倒ではありますが、気温によって衣服を替えうまく調整するようにしましょう。
さて秋の養生の仕方について話してきましたが、今の身体は前の季節の過ごし方の影響を強く受けます。
そのため秋の過ごし方が、その冬の間の体調に大きく影響してきます。
冬に身体を痛めたり、気分が落ち込んだりとトラブルが出やすい方は、ぜひ秋の過ごし方に目を向けてみてください。
すべてのことを実行する必要はありませんので、できそうなことから試してみてください。
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