五臓の脾(ひ)③
さて五臓の脾の話の3回目です。
今回は今前回までにお伝えできなかった脾についての補足と、脾に関係する六腑についてお伝えしたいと思います。
まずは前回までにお伝えできなかった、脾についての補足なのですが、補足というのは脾が弱ったときに食べた方が良い物についてです。
●脾と甘いもの
脾欲甘
「黄帝内経素問」五蔵生成篇第十
甘緩
「黄帝内経素問」蔵気法時論篇第二十二
東洋医学では五味という考え方があり、その味の食べ物を摂ることで身体に様々な反応が起きると考えられています。
五味には酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(かんみ)の5つがあります。
その五味の中で、脾が弱ってきたときに重要になってくるのが甘いものです。
その中でも甘味には滋養作用と弛緩作用があると言われています。
脾は五蔵の中でも消化機能を担当しているのですが、器官が弱ったときに脾が栄養を作り送ることで回復していきます。
しかし脾自体が弱ってしまった場合には、新しく栄養を作り送ることが難しくなってしまうのです。
甘味には滋養作用があり、甘味自体が脾を滋養してくれると考えられています。
そのため、甘味は脾が弱ったときに機能を回復して、気血津液を作りやすくしてくれるのです。
また甘味には弛緩作用があると言われています。
脾が弱ると肌肉が突っ張ってしまうことがよくあるのですが、肌肉が突っ張ってくると肌も突っ張ったり、筋肉の動きもぎこちなくなってしまいます。
そんなとき甘味の弛緩作用が有効なのです。
甘いものを取ると生肉の緊張が緩んでくれるのです。
ただし甘いものを摂りすぎると、緩みすぎてダルンダルンの締まりの無い状態になってしまうため、摂り過ぎは禁物です。
各五臓には表裏の関係になっている六腑が存在します。
六腑は五臓の働きをサポートし、五臓の力は六腑に影響しています。
●脾と胃
・表裏関係
脾主為胃行其津液者也
「黄帝内経素問」厥論篇第四十五
夫五味入口 蔵於胃 脾為之行其精気 津液在脾
「黄帝内経素問」奇病論篇第四十七
脾合胃 胃者 五穀之府
「黄帝内経霊枢」本輸篇第二
現代の医学においても消化器の重要な器官である胃は、東洋医学での消化器の脾と表と裏、陰と陽の関係にあります。
むしろ脾胃というようにひとまとめにして考えられることがよくあります。
東洋医学では胃を火にかけた鍋、脾と火力調節機能と比喩表現することがあります。
この鍋の火は胃の陽気だと考えられていて、その陽気は心包から送られてきていると考えられていて、これを相火(そうか)と言います。
※相火についてはまたいつかお話したいと思います。
その相火と腎が持っている津液で、胃に入ってきたものを脾の力で蒸し焼きにするようなイメージで、消化吸収して気血津液を作っていると考えられています。
脾が津液を使って蒸し焼きにしているのですが、この機能自体にも津液が関わっています。
そのため脾は腎からの津液がなければ動けないのです。
各五蔵もそれぞれ関わり合うことで力を発揮できているのですね。
・五味
脾胃者 倉廩之官 五味出焉
「黄帝内経素問」霊蘭秘典論篇第八
五味入口 蔵於腸胃 味有所蔵 以養五気
「黄帝内経素問」六節蔵象論篇第九
食べたり飲んだりしたものは胃に入り、脾胃の働きで水穀の精微になり、そこから様々な過程を経て気血津液に作り変えられます。
前回、脾がしっかり働くと味を感じることができると話しました。
これは正確には五味による作用をしっかりと働かせる事ができるということです(ちょっと難しいですね💦)。
五味は対応する五蔵の働きを助けてくれるのですが、脾胃がしっかり働いていないと五味も仕事ができないのです。
さて3回にわたって脾について話してきました。
脾は消化機能を主る関係上、身体に関わる全てのことに影響を出しやすいのです。
比較的、日本人は脾胃が強くないと言われているのですが、脾胃がしっかりしていると健康だと言っても過言ではないでしょう。
また美容にも関わっているので、少し気にしてあげてもいいかもしれませんね。
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