ただの水じゃない?東洋医学の『津液』(前)
今までに『気』『血』について話しましたが、今回は『津液(しんえき)』です。
気血水は聞いたことがあるかもしれませんが、東洋医学では気血津液と呼ぶことも多いのです。
なぜ水ではなく『津液』と呼ぶのでしょうか?
今回はそのあたりも含めて『津液』についてみていきましょう。
●津液とは
『津液』とは身体の中の水分全般を指します。
正確には身体の中の『血』以外のすべての水分です。
例えば細胞内の水分や、身近なところだと関節内の水も津液です。
この津液が体外に出てくると、汗や鼻水、唾液、涙などと名前が変わります。
●水と津液
水分なら『水』でもいいのに、なぜ『津液(しんえき)』と読みづらい言い方を使い続けているのでしょうか?
それは、『津液』は『津』と『液』という違う性質で違う役割の水分だからです!
ただし作られ方は同じだし、実は必要な時にはお互いに変化し合うのです。
例えば『津』が足りなくなれば、『液』が『津』に変化します。
役割は違う、でも見た目は似ていて同じものからできているし、お互いに変化し合う。
さすがに『水』と一まとめにしてしまうと区別が難しくなるため、あえて『津液』という言い方をしています。
●『津』と『液』
『津液』は、基本的には水分で、各臓腑や器官を潤す働きを持ちます。
先ほど『津』と『液』で性質や役割が違うと言いましたが、その違いを見てみましょう。
-
津
- 陽の性質が強い
- 澄んでいて、サラサラしている
- 流動性が大きい
- 身体の表面(皮膚や粘膜)に潤いを与える
- 比較的全身に分布していて、隅々まで行きわたることができる
-
液
- 陰の性質が強い
- 濁っていて、ネバネバしている
- 流動性は小さい
- 関節の動きをスムーズにする
- 骨、関節、骨髄、脳、臓腑など特定の部位にのみ存在する
対照的な印象がありますよね?
基本的には同じでも、真逆の性質を持っていて、しかも片方が足りなくなるともう片方から変化できるって面白いと思いませんか!
●津液の作られ方と五臓六腑との関わり
『血』のはなしで少しだけ触れたのですが、『津液』も脾胃で飲食物から作られています。
正確には、飲食物が脾胃で糟粕に変化し、その糟粕を脾の力で小腸まで送って、小腸と脾の力で糟粕から有益な水分を取り出したものが『津液』です。
この『津液』は様々な臓腑の働きによって、全身を潤すことに使われています。
まず脾の働きで出取り出された『津液』は、引き続き脾の力で肺に送られます。
肺は水の上限と言われており、そこから『津液』を全身に送る役目を担っています。
肺から送り出された『津液』は三焦を通って全身に送られていきます。
各臓腑や器官へ送られた津液は、その臓腑や器官を潤すために使用されます。
そして最終的に腎に送られて、腎で再利用できるものは濾し取り、再利用できないものは膀胱へ送って排泄します。
『気』も『血』もそうでしたが、『津液』も色々な臓腑と関わりを持っていますね。
すべての五臓六腑は気血津液がなければまともに働くことができませんし、気血津液も五臓六腑がなければ意味をなしません。
相互に作用しあって初めて身体が正常に動くのです。
気血津液について
『東洋医学の『気』って何?(前)
『東洋医学の『気』って何?(後)
血?血液?東洋医学の『血』(前)
血?血液?東洋医学の『血』(後)
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参考文献
- 黄帝内経
- 日本鍼灸医学 経絡治療学会編纂
- よくわかる経絡治療講義 大上勝行
- 東洋医学のしくみ 新星出版社
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