ただの水じゃない?東洋医学の『津液』(後)
前回に引き続き、『津液』の話についてです。
前回は『津液』の性質や働き、五臓との関わりなどについて見てきましたね。
今回は『津液』の異常が引き起こすことについてお話したいと思います。
『気』、『血』と同様に『津液』も身体にとっては必要不可欠な存在です。
そのため、その過不足によって身体に大きな影響を与えてしまいます。
●津液の異常
『気の病』や『血の病』などと違い『津液』の異常には特別な名前はあまり使われません。
しかし『津液』だって異常が起きれば不足や停滞を起こします。
『津液』が足りなくなる状態はあまり特別な名前で呼ばれることはありませんが、一応津虚(しんきょ)や津液虚などという言葉はあります(あまり使いませんが…)。
逆に停滞している状態は水湿、水滞、水毒など文献や時代によって様々な言われ方をします。
停滞に関しての呼び方には、停滞の程度による差もあったようなのですが、それも文献や時代によってまちまちです。
●津液の不足
何らかの原因で津液が足りなくなっている状態です。
『気』や『血』と同じで、やはり『津液』を作るための材料不足や、消化機能の低下によって起こります。
もしくは過剰な発汗、激しい下痢や嘔吐などによる『津液』の使い過ぎや、外邪による津液の蒸発や乾燥によって起こります。
津液が不足するとどのような症状が現れるのでしょうか?
- 津液の不足による症状の例
- 皮膚、髪の乾燥
- 口が乾く、声がれ
- 便秘
- 関節が動かしづらい
●津液の停滞
何らかの原因で津液がうまく流れず詰まっている状態です。
これは『津液』がすくなる過程で、濃度が濃くなりドロドロになてしまったり、五臓六腑の働きが弱ってしまった結果、うまく外に出せずに体内に溜まってしまったりすることで起きます。
流れの悪くなっている『津液』のことを湿、痰飲、水腫、痰濁などと呼びます。
一応状態によって呼び方が変わるのですが、時代や文献によってかなり差があり、明確に分けることは難しくなっています。
津液が停滞するとどのような症状が現れるのでしょうか?
- 津液の停滞による症状の例
- 汗が出ない
- 尿が出ない
- むくみ
- 下痢
- 痰の絡んだ咳
『気』や『血』の以上と比べると、激しい症状は少ないのですが、むくみを代表するような日常でよく見かける症状がとても多いです。
それだけ現代人は『津液』の異常を抱えていると言っても過言ではありません。
ただし、『津液』も『気』や『血』と密接に関わっているため、『気の病』や『血の病』から『津液』の異常につながるケースも非常に多いのは事実です。
津液の異常は比較的簡単に確認できます。
見るべきところは唇と舌です。
唇は体表から観察できる数少ない粘膜なので、身体の水分量が一目で分かります。
唇が乾燥している場合は津液不足、もしくは津液の不足によって起きる停滞が起きている可能性が高いので、水分の摂取を増やしましょう。
しかし人体が一度に吸収できる水分量には限界があるため1回の摂取量を増やすのではなく、摂取回数を増やしたほうがいいでしょう。
また『血』のときにも触れましたが消化機能の低下が起きている場合は、消化に良いものをよく噛んで食べることが大切です。
唇は乾燥していない場合は舌をベーっと出して鏡で見てみてください。
舌が口角(口の端)に触れるほどの大きさになっていたり(胖大舌)、舌の側面に凸凹と歯のあとがついたり(歯痕舌)していれば、ほぼ確実に津液の停滞です。
この津液の停滞は代謝がうまく行かない結果の停滞なので、運動で汗をかく、トイレを我慢しないなどしっかりと排出してあげる必要があります。
これで気、血、津液については終わりです。
実は、まだまだお伝えしきれてないことがたくさんありますが、臓腑や陰陽なども絡むためその時に補足をしていこうと思います。
気血津液について
『東洋医学の『気』って何?(前)
『東洋医学の『気』って何?(後)
血?血液?東洋医学の『血』(前)
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参考文献
- 黄帝内経
- 日本鍼灸医学 経絡治療学会編纂
- よくわかる経絡治療講義 大上勝行
- 東洋医学のしくみ 新星出版社
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