五臓の肝①
「五臓六腑にしみわたる」という言葉を聞いたことあるのではないでしょうか?
この五臓六腑は東洋医学ではなくてはならない考え方の一つです。
今回は五臓六腑の中でも「肝」についてのお話です。
以前に春の養生についての記事を書きました。
そのときに、春には肝が頑張っているという話をしたので、今回は肝についてのお話です。
今回は肝の性質について書いていきます。
まず、東洋医学では気、血、津液が全身を巡ることで体を正常に保っています。
その気、血、津液を管理運営しているのが五臓なのです。
また五臓自体も気、血、津液を消費することで活動しています。
●肝の性質
肝にはいくつかの働きがあります。
・発陳(はっちん)
春三月此謂発陳
「黄帝内経素問」四気調神大論篇第二
肝は五行では木に属しています。
また木には、季節では春が、時間帯では朝が配当されています。
肝は春や朝に最も力を発揮し、その力の性質は上昇と発散とされています。
発陳の陳という言葉には過去のものという意味があります。
肝は冬や夜に体内に溜め込んだ力(過去の力)を春や朝に上方や外側に向けて働かせることで、春に身体が動かしやすくなったり朝に目が覚めたりします。
・血を蔵す
肝蔵血
「黄帝内経霊枢」本神篇第八
全身を巡っている血は、普段は肝に貯蔵されています。
肝は必要な量の血を必要とされている場所に送るための管理計画しています。
その情報をもとにして心が血を送り出し、経脈を通って各器官に送られていきます。
この肝の働きは、肝に貯蔵されている血の量が多いほど正確に行うことができます。
逆に貯蔵される血が少ないと、うまく各箇所に送られなかったり、送ることができたとしても量がマチマチになってしまいます。
・将軍の官
肝者将軍之官謀慮出焉
「黄帝内経素問」霊蘭秘典論篇第八
在志為怒
「黄帝内経素問」陰陽応象大論篇第五
「謀慮」とは「積極的に考えをめぐらし、計画を練る」という意味です。
つまり集中して何かを考える事ができるのは、肝がしっかりと働いていくれるからなのです。
逆をいえば、肝がうまく働かなければ集中力がなくなり考えがまとまらなくなります。
またその状態が続くと、焦ってイライラが募ってしまうとも書かれています。
・魂を舎(やど)す
血舍魂
「黄帝内経霊枢」本神篇第八
随神往来者謂之魂
「黄帝内経霊枢」本神篇第八
肝者罷極之本魂之居也
「黄帝内経素問」六節蔵象論篇第九
与営衛倶行而与魂魄飛揚使人臥不得安而喜夢
「黄帝内経霊枢」淫邪発夢篇第四十三
東洋医学での魂とはヒトの行う活動のなかでも心理的な反応によるもののことを指していると言われています。
その心理的な反応は学習することで補完される精神活動で、その対となるものは本能による活動です。
この魂は肝によって管理されていて、肝に血が充実して初めて機能するとされています。
そのためストレスや疲労により極端に血が消費されると、肝の機能が低下し魂もうまく活動できなくなります。
魂の活動が低下すると物忘れ、難聴、頬が垂れる、気にしなくてもよいことを気にしてしまうというようなことが起こりやすくなります。
また魂に異常が起きると睡眠の異常が起こることが多いです。
これは全身を巡っている血が肝に戻ることでヒトが眠りにつくという東洋医学的な生理現象に関連しています。
仮に魂に異常が起きると、眠りが浅くなったり、夢が多くなったり、うわ言が増えたりということが起こります。
さて東洋医学の臓腑の1つ、肝について話してきました。
肝だけでも様々なことをしてくれていますね。
ですが、肝の仕事はこれだけではありません!
次回は肝と身体のパーツとの関わりを話していきます。
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